沖縄の住宅事情は、総務省統計局全国調査で見る限り、東京・大阪など大都市圏と同様、過密だ。一住戸に占める居室面積の割合は全国最下位。つまり、多人数の割に、一人当たり、室面積の割合水準が低いことになる。ところが、住まいや、それらを取り巻く周辺環境に対する満足度は、意外に高いものがある。
その訳は。南の住まいには居室面積だけでは測れない「豊かさ」があるということだ。
那覇空港から市内へと車が進むにつれ、高層建物の姿が目につく。帰る度に思うことだが、都市型の集合住宅が増えた。経済効率優先の建物ということだが、いわゆる閉鎖空間からくるシックハウス症候群も、近々、大都市圏に迫るのではないか。確かに、ここ数年来、対策としての建材や、建築工法などは、進歩の一途にある。
しかし、この辺りで、もう少し肩の力を抜いてみたらどうだろうか。戸建て住宅に限らず、集合住宅でも、自然を取り込むことは簡単だ。南の住まいでは、西日の遮蔽をうまくすれば、共有の廊下や、占有のバルコニースペースを、半戸外空間として活かせる。光を取り入れたスージ小や、オープンテラス。人々の集いの為に、できるだけ大きい樹木の陰を取り込む。木陰は、南の暮らしのごちそうだ。
室内計画も、間仕切りの高さや、「風の道」に配慮すれば、機械設備に頼ることも減る。自然素材に加えて、半戸外型プランで工夫すれば、シックハウス対策にも効果が上がるはずだ。 全国ネットで、「南の会」というのがある。南方の外国に、移住者を斡旋する団体だが、加齢に伴い、帰国者が増えていると聞く。医療施設と併用し、県内にこんな「南の住まい」があったらどうか。
(菅原 律子/菅原律子設計事務所代表)
2002/01/19(琉球新報掲載分)
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